僕はこの程度の文章しか書けない

晒しの意味も込めまして、3年ぐらい前に書いた「関西弁萌え」についてのSSを

これを読んだ関西出身の友人に「全然違うから二度と書かないでください」とまで言われました


「せんせぇー。今日K君が掃除サボってはりましたー」
アイツが、帰りの会で急にこんなことを言い出した。
「おま、サボってないわ!」
「まぁーた、そうやって言い訳ばっかやなー、あんたはー」
俺はカッとなって次には泣かせてやろうとした瞬間に
「夫婦喧嘩はよそでやれやー!」
とクラスのみんなから野次が入り
「夫婦なんかやないわ!」
コイツと同時にそう叫んでいた。
「Kと一緒に言うなんて最悪やわー・・・」
「ちょ、どういう意味や!?それ!」
「あー・・・ようわからんが、罰としてお前らゴミ捨て行っておいてくれやー。それで両成敗にしとくか」
「なんでアタシも・・・なんでなーん!せんせぇー。堪忍してー」
「・・・いい気味や」
そう笑って言ってやった。

コイツは、何かにつけて俺に突っかかってくる。まさか幼稚園から高校まで一緒なんて誰が予想しただろうか。神様のしわざなんてのはもっとロマンチックなことのためにある言葉で、決してコイツとの腐れ縁のためにあるのではないと祈るだけだ。家が離れていないから通学班も同じだし、子ども会も同じ。たいていの思い出にはコイツがいる。まったく迷惑な話だ。あんたもそう思うだろ?

罰のゴミ捨てを終え、帰宅の路へと足を進めていく。もちろん、アイツもいる。帰る方向が一緒だからだ・・・あと15分、アイツと一緒かと思うと少しうんざりしてくる。まぁ、ほぼ毎日のことなんだがな。
「なー・・・バレンタイン、誰かからチョコもらうん?」
コイツがそんな「らしくない」話題で話を始めたのは、この日が初めてだったかもしれない。
「あいにくそんな色めいた予定はないなぁー」
2月に入り、だんだん街もそんな雰囲気を見せだしてはいたが、俺はまったく気にしていない。なんといっても関係がないからだ。コイツがいるせいで、周りは俺がこいつと付き合ってると勘違いしてやがる。余計なお世話だというのに。
「どーせまた、おかんと妹から1個ずつもらうだけやろうなぁ」
「うわー、むっちゃかわいそう・・・」
「うるさいわ!そういうお前はあげる予定あるんか!」
「う、うち・・・?うーん、ないわけやない、よ・・・」
「へー。でも、お前からチョコもらうやつ可愛そうやなー。お前なんかもらって腹痛起こさんといいけどなぁ」
「ひどー!あ、あんたには絶対にやらんからなぁ!」
「そうしてくれると助かるわー」
その夜思い出してみたが、アイツからチョコをもらったことは一度もなかった。特に気にしていなかったし、欲しいとも思っていなかったからだろう。好きな人にチョコを渡すなんて、まさかそんな女の子くさいこと、アイツには照れくさくてできないだろうと、そう思い少し笑ってしまった。

それから、アイツは急に俺に話しかけてこなくなった。通学は相変わらず朝も帰りも一緒だが、話すことが極端に減った。体調でも悪いんだろうかと思ったほどだ。でも、そこでそんなことを聞いたらアイツのことだから仮病でも使ってなんかおごらせようと企てるに決まってる。だから、俺は何も聞かなかった。そんな日が1週間ほど続いた。

「おーい、帰るぞー」
「う、うん・・・」
返事はしっかりする。しかしそのあとがない。
吐く息が白い。季節は本当に冬から春に変わるのだろうかと疑問に思うほどだ。このまま冬のまま終わってしまうことはないと願うだけだ。
「あのなー・・・」
ひさびさにコイツからしゃべり出した。俺は少しだけ驚いて
「おう?」
と返事をする。
「き、今日バレンタインやんかー。うち、弟とお父さんの分、作ったんやけど、少し余ってん。だから、こ、これあんたにあげるわ」
あ、そうだった。今日はバレンタインデーだった。うちの学校はチョコを持ってきてはいけないので、学校内での受け渡しはなかった。だから、少し感覚が麻痺していたのだろう。どうりで、女の子たちがざわざわしていたわけだ。
「お前が作ったんか?」
コクリ、とうなずく。
「そ、それじゃあ食べたらお腹壊しそうやなー・・・ははは・・・でも、ありがとなー。ありがたくもらっとくわー」
こういう場に慣れていない自分が少し情けなく思う。こんなことしか言えないのだろうか、俺は。
それから無言が続いた。時間が、空気がこんなにも重いものだとは思わなかった。
「じゃ、また明日な」
「ん。さいなら」
そう、一連のあいさつのあと、俺はなぜか笑みが止まらず、走って部屋まで帰った。走っていないと、ドキドキしているのがごまかせないのだ。

夜、俺は部屋でゆっくりとアイツからもらったチョコを見た。
「これ、絶対余りもんとちゃうやろ・・・あいつは、もう・・・素直やないんやから・・・」
明日、何を話そう。たまには俺が早起きして、俺から迎えに行ってやろうか。それとも何かおごってやろうか。色々考えていたら、自然と笑顔になった。大きいハート型の少し苦いチョコを食べながら、俺はホワイトデーのお返しを考えていた。


こんな文章書いてた自分が情けない